2020年4月11日の宮田愛萌さんのブログ
宮田愛萌さんの「ゲシュタルトって人だと思ってた。」
本日次のブログは宮田愛萌さんです。
ゲシュタルトって人だと思ってた。
https://www.hinatazaka46.com/s/official/diary/detail/33289?ima=0000&cd=member
ブログの概要
「あれってハクチョウじゃない?ね、見て!」
目の前が揺れるような強い陽射しの中で急に肩を叩かれ、僕は驚いて振り返った。その先にいた見知らぬ少女越しに見た白い鳥はどう見てもサギで、声をだして笑ってしまった。
「あれはハクチョウじゃなくてサギじゃないかな?ハクチョウは夏には北の方に行ってしまうから、いないはずだよ」
つい答えてしまって引かれるかな?と思っていると、「ものしりだね!」と少女は笑った。
これが僕と少女、リナとの出会いだった。
あの日、急にリナが話しかけてきたのは本当に偶然で、学校から帰る途中に川で泳ぐ白い鳥を見つけてテンションがあがってしまったのだと言った。
「だって君も制服で、私も制服だったもの。ね?」
お互いにどこの学校に通うかわかっている状態なら安心でしょう?とリナは笑ったが、僕には女の子の制服の違いなんてよくわからなくて、そうかもね、と曖昧に頷いた。
リナとはそれからも細々と交流は続いていた。ただ、互いにSNSはフォローしていたものの、リナは音楽高校に通っていたから忙しく、滅多に会うことは無かった。SNSでリナがアップする年に一度の邦楽演奏会のポスターや箏の前に座る写真を見ながらいつも、住んでいる世界が違うのだろうなと考えていた。
そして、気がつくと僕たちは高校を卒業して、大学生になった。
リナは無事に附属の音楽大学への進学が決まり、僕も北海道の大学の農学部へ進学が決まった。リナとはもうほとんど連絡をとらなくなっていた。これが少女漫画ならば恋が始まるような出会い方をした僕たちだったけれど、現実はそう甘くはないのだなと思う。関係をなにも進められなかったのは“運命”でも“現実”でもなく、僕なのだけど。
大学2年生のよく晴れた夏の日、何気なく見たリナの投稿には北海道に来ることが書かれていて、少し迷ってから僕は連絡をした。
『北海道来るの?僕も今北海道にいるんだけど会えないかな??』
キャリーケースを持って僕の前に現れたリナは、初めて会った時と変わらず綺麗だった。
「久しぶり!東京からそのまま来ちゃったから大荷物」
「うわ、それはごめん。」
「久しぶりに会いたかったら全然!姉の家行くだけだし。実家は室蘭なんだけど、姉が札幌にいるから今日の夜泊まるの」
「あれ?リナって出身、北海道だったんだ。ずっと仙台だと思ってた」
それは僕の勝手な思い込みだった訳だけど、リナは真面目な顔をして首を傾げた。
「あれ、そんなこと言ったっけ?」
「いや、よく野球観戦に行ってるみたいだったから」
SNSに載っていたクリムゾンレッドのユニフォームを着た写真を思い返して尋ねると、リナが納得したように答えた。
「好きな人が、野球好きなんだよね」
※この小説はフィクションです。実在する人物や団体などとは関係ありません。
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みやた まなも#265